「三つの平面による構成」 九日目 (比留間雅人)

この二日はデータをいじる作業と、原稿の校正。事務手続きですぎた。原稿は二種類。ひとつは「消費欲望」に関するマーケティング関係の論文、もうひとつは「生物多様性」に関する座談会記事。強烈に眠い。八日目に、写真と挨拶状の掲示方法をリニューアル。たぶん最終日まで微修正を繰り返すことだろう。今日は昼休みを利用して電気をつけにいく。センサはあきらめた。蛍光灯の灯りが部屋の煤けた黄緑色をのっぺりと照らして、なんだかとてもよい感じだ。この部屋に手を加えたところといえば、前回展の加藤恵美子さんの写真と鏡を貼ったこと、椅子を並べたこと、黒電話を置いたこと、くらいだ。
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目標設定・戦略立案・戦術選択の三つは、いかにも順に確定されていくようにみえるが、現実はそうではない。戦術は目標や戦略に従属するようでいて、たしかにそういう側面があるのは事実なのだけど、でも実際にとりうる戦術の選択肢は限られていることが常だから、「やれること」から逆向きに戦略や目標を構想することもある。特に戦略や戦術が具体化し動き始めてしまったあとでは、目標の方向性を微修正してツジツマをあわせることもある。それを見越して、事前に掲げる目標を一部曖昧にしておくことは、組織人の基本的な生活の知恵だ。つまり、目標-戦略-戦術は循環参照の関係にある。
この点で、「生物多様性」というイシューに興味がある。そこでは、地球温暖化とか環境汚染などのように「悪者」が明快な物語と異なり、アッチを立てればコッチが立たずという、複雑な因果関係・相関関係として「環境」を対象としている。その結果、環境に対する価値観がいかに相対的なものかが露呈するだろう。「正しい行動をする」という安易な考えはもはや許されない。絶えず「何が正しい行動かを検討しながら、その都度正しいと思われる行動をする」というひどくヤヤコシイ状況になる。このとき、「生物多様性」に関する施策をまじめに考えようとすると、その目標・戦略・戦術それぞれについて、常に「いかようにでもあり得るからこそ、いかようにもならない」という事態に直面する。ままならないからこそ、目標やら戦略やら戦術を立てるものの、目標-戦略-戦術の循環参照関係がグルグル回りはじめる。おそらくこここで僕らは、複雑に絡み合った因果関係・相関関係すらもはや与件ではなく、そうした関係自体が生起する瞬間の、あらゆる可能性に開かれた状況が「あったのではないか」と思わずにいられないだろう。