作家と語らう夕べ 今道子展 (西松)

東京・銀座奥野ビルのギャラリー巷房とその地下、及び306号室で今道子写真展(1月10日~1月22日)が開かれている。巷房では、魚やエビなど海の生き物を素材にしたオブジェや静物画風の写真が主に展示され、地下では障子を用いた影絵風のイメージの新作が出品された。また306号室では、丸い鏡などかつての美容室のたたずまいが残されているその部屋で撮影され、空間を生かした作品が展示された。
今回の写真展について、1月14日の夕方、306号室で作家の今道子と語らうささやかな催しが行われた。以下に、その発言の一部を紹介する。(文責 西松)

黒多) 地下でやった障子の作品は今までと全然違いますよね。対象が自分になっているというのがいい。正面に飾ってあったのは、影みたいな感じで、写真の裏表、ネガとポジみたいな感じですね。
比留間) 今さんの背景の黒というのはすごく面白い。あれが黒なのか? 背景なのか? 奥行きを持っているのか? 見ているとぐるぐるしてくる。 単純な地のようにも見えるし。それによって今回のDMの馬みたいな動物の図「こはだのシマウマ」が可愛らしい生き物に見えるし、ディテイルを見ると腐敗してゆく生き物に見えるし、そのコントラストを黒が支えていると思う。
黒多) 馬とか犬とか完全に地に足がついている、重力のある物の向こうに空間が感じられるのは黒だからと思う。306号室の「太刀魚のオーバーコート」でも、一番いいのは、鏡のあるところ。コートはずっしりした重力を感じるんだけどそこにぬけてゆくような空間を感じる所が特色なんじゃないかな。
西松) 我々はこの部屋を知っているから客観的になれない。しかし、ここの空間を知らない人たちは今さんの空間的な作品をどう思うか? ほかのギャラリーで見せたい。作品を独り歩きさせてやりたいと思う。
今) これまでは、物が写ればいいって感じで、あまりバックがぼけるとかいうのがなくて、できるかぎりピントを合わせて撮っていた。空間という感じがなかったかもしれない。この部屋は好きですよ。この部屋がなかったら撮れなかったかもしれない。もうちょっと、撮ってみたいな。飽きるまで・・・・・・・