306号室のヴィーナス ~遠藤和希子展~

裸婦をテーマとした遠藤和希子の新作展を見る。部屋に入ると、扉やカーテンで動線が作られ、絵を巡りながら奥へと誘われる。しかも場所に合わせて作品が置かれている。「入口以外の作品はすべて、306号室のために描いた。部屋と絵があってこそ完成する作品を目指した。」という。

私が気にいった作品のひとつは、ベッドの上に置いた絵に描かれた裸婦の半身像。現実のベッドと絵のヌードを組み合わせたところが新鮮だ。しかも画面の大半は、空白になっており、両端に身体が分かれている。見ていて困惑し、一つになった姿を妄想する・・・。どうやら作者は見る者が考え込むことを、初めから読みこんでいるようだ。

ヌードというのは、人類美術史上、最も古い題材で、旧石器時代から現代まで、何万回となく描かれてきた。ジョルジョーネの「ウルビーノのヴィーナス」、マネの「オランピア」と名作も多い。それには理由があって、最も普遍的で単純な題材であるがゆえに、前の時代にはなかった新しい意味付けと造形が必要とされたからであろう。

日本の商業文化の中心地である銀座に作られた古いビルの一室に出現した新しいタイプの裸の女性たち。どれも絵の構造と場とが見事に合体され、見る者を挑発し、勝手気ままなポーズを取り、飛んだり跳ねたり・・。それを見ているうちに、ある解放感が伝わってくるのを感じたのだが。それは一体なぜだろうか?

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