黑多弘文 「study 72 / 動いている庭Ⅱ」

黑多弘文
「study 72 / 動いている庭Ⅱ」
2/19(日)20(月)
13:00-19:00

study 72 / 動いている庭II 小さな庭

つくりものとたまたま

建物の窓の下の出っ張り。なぜここに植木鉢をつくったのでしょうか?
カスミソウの種を蒔いたが芽がでませんでした。ムスカリとヒヤシンスの球根は土の中で行方知らずです。クラッスラは外壁検査の時に抜かれてしまいました。ある方が蒔いた種は綿毛の白い花を咲かせてぱっと枯れました。
それでもやはり窓の景色はつくりものです。
暖かなある日久しぶりに部屋に行き空気の入れ替えをしようとした時、窓の向こうで太い茎と葉の間から赤い花がちらちら首を振っていました。
小学校の通学路には朝露で濡れた雑草のかたまりが勢いよく連なっていました。オシロイバナの花びらをそっとつまんでとってまん丸な種をひっぱってつくった落下傘を歩道橋の上から空に向かって投げました。ゆらゆら赤い落下傘は道路へ落ちていきますが、風に乗ってふわりとどこかに運ばれてたり車に乗ってするりとどこかに運ばれて行きました。ぼくたちはべたべたと青い草花の命のにおいを纏って歩道橋の階段を降りました。落花傘は町のあちこちに白や黄や赤の花を咲かせました。やがてその子のまたその子またまたその子の落下傘ひとつ306号室の小さな庭に落ちました。