「study 81 / 台風が近づき蛍光灯は低く鳴る」

黑多弘文
「study 81 / 台風が近づき蛍光灯は低く鳴る」
2023年5月29日(月)〜30日(火)
15時〜19時

「それにしてもだよ、きみ。なんだって彼女はこんな所にテープを貼ったのかね?ベタベタと」警部 は天井を見上げ大きな咳をしてくしゃくしゃのハンカチで口元を抑えながら喋り続けた。「このテー プは粘着力が相当強そうだな。何かを貼ったようだが、テープだけが残ってる」 「どうやら蛍光灯を囲むようにして何かを貼り付けたみたいですね」探偵はぼさぼさの髪を掻きむ しりぼそぼそつぶやいた。「テープを使うくらいだから、そんなに重い物ではないでしょう」 探偵は蛍光灯を見上げながらぐるりと回った。 「だいぶ長い間貼っていたのでしょうね。テープもテープの剥がれた跡も茶色になって並んでます ね」

うーんと警部。鏡を覗く探偵。 「警部さんちょっと鏡の前に座ってみてくれませんか」 探偵は体を折り曲げ、鏡の中で真正面に畏った警部の頭の上を指さした。 「ほら、ここ」
警部は握り締めたハンカチを振り上げた。
「よし!わかった!」