ほおずき市(西松)

文京区の光源寺で7月9日と10日に行われた「ほおずき市」に、銀座奥野ビル306号室プロジェクトが出店した。境内に大きなテントが張られ、縁日では馴染みの射的や金魚すくい、そしてやきそば、おこわ、生ビールなどの飲食店とアクセサリーや工芸品などを並べた店がずらり50~60。珍しいところではピロシキの店や似顔絵描き、福島支援の写真展や物産展なども店を出していた。また本堂脇のステージでは各種の踊りや太鼓、尺八、ギター・バンドがほぼ1時間ごとに演奏され、近所迷惑にならなければいいがと心配になるほど賑やかだ。昼間は子供連れの主婦が目立ったが、夕方になると勤め帰りの男女が増え、ほおずき市はあふれんばかりの盛況だった。

hozuki001.jpg

306号室プロジェクトのブースでは、鳥の形のガラス細工、紙の部分に金魚の絵を版画で刷った金魚すくい、306号室の部屋の光景をモティーフにした樹脂や写真、奥野ビルのディテイルを型取った石膏の破片、それに「なぐさみくじ」と題したおみくじ等、多彩な品が出され、それに本郷館の写真展と関井記念館の貧芸品が加わった。地元ということもあって本郷館の写真は多くの人から注目を集めた。今は失われた建物を惜しむ気持からか組写真がよく売れていた。貧芸品のひとつ「携帯山」は竹棒の両端にゆとりのあるひもを結びつけたもの、ひもの中ほどを持って提げると山の形になり、携帯するといつも山が見られることから「携帯山」とネーミングされた。鬚の爺に依るいかがわしい説明パフォーマンス付きであったが、怪訝そうな見物客の顔つきは縁日にふさわしい光景であった。
306号室の出品物では「ガラスの鳥」と、「金魚すくい」、「なぐさみくじ」に人気があった。「ガラスの鳥」は、手作りで一つ一つ、少し形が異なる。そこに面白さを感じたのか6個まとめて買っていった人がいた。「金魚すくい」には夕方からアニメの泳ぐ金魚が投影され、目ざとい子供たちの人気の的だった。『おみくじは「まだ若いんだから。。。」でした。50円がズンと価値をもって響きました。』と、これは「なぐさみくじ」を引いた寺の住職夫人からのメール。確かな御利益があったようだ。私個人の好みでいえば、建物のディテイルを型取りした石膏の破片に惹かれた。遺跡からの出土品を思わせ、ビルの未来を暗示するが如きブラックさが何とも言えない。

hozuki03.jpg

売り上げは、予想外に多かった。他のブースに比べると品物がバラバラで全体のデザインも統一感に欠けるきらいはあったが、逆に縁日で見慣れたモノではなく、一風変わった品揃いに面白さを感じる人も少なからずいたようだ。住職夫人からは『縁日にぴったりの展開をしていただき有難うございました。意外な発想で来年もいらしてください!』 という御礼の言葉が寄せられている。これを額面通り受け取っていいかどうかは、微妙なものがあるが、「縁日」そのものが強烈な一つの場であることは確かで、ある意味では306号室でのアート・プロジェクトに繋がる意義ある野外活動だったのではないだろうか。