黑多弘文「 study 71 / ぱら ぱら ぱら ぱら 」

黑多弘文
「 study 71 / ぱら ぱら ぱら ぱら 」
2月5日 日曜日 
13時から18時すぎ

豆まきの翌朝

はなしは覚えているが絵が思い出せない。どうだったかなと「泣いた赤おに」を手に取ってみる。本が軽くて驚く。こんなにツルツルでピカピカだったかな。ベタベタザラザラして大きくて床に広げてページをめくるのに体を捻ってと。内容よりも幼い体の記憶が蘇る。はたして、赤鬼はこんな顔だったか?もっとザラザラした厚紙をくしゃくしゃにした顔ではなかったか。おにはそとーふくはーうち おにはーそとふくはーうち1オクターブ高い叫びが家中を揺らす。おにはあーWaoo〜そとっ〜nWaoo〜nふくはぁうちWaoo〜n。父が豆をばら撒くと近所の犬どもが遠吠えで応えた。豆まきはけものとけもの交感だ。
 もう一冊「おにたのぼうし」。
最後、おとこのこはどうしたの?当時はよくわからなかった。今ならわかる。犬にはわかっていたんだ。ぱら ぱら ぱら ぱらぱら ぱら ぱら ぱらただ音だけが聞こえてきます。豆まきの翌日の朝。床に四つん這いで会った赤おにはすでにいない。それより、ほんとうにおにがいなくなってさびしい。