黑多弘文 「目玉/声と目玉4 1/2」

黑多弘文
「目玉/声と目玉4 1/2」
3月13日(水)14日(木)
15:00-18:00

あらゆる所から同時に瞬時に音が集まる聴覚の世界の中心に わたしはいる 視覚は距離 見ているわたしは見ている対象の外にいる。部屋を見る 世界を見るため目玉をあちこち動かさなくてはならない
けれど 耳が聞こえ目が見えるのは当たり前ではない ことを想像する
いのち短し、戀せよ、少女、朱き唇、褪せぬ間に、熱き血液の冷えぬ間に、明日の月日のないものを。
作詞吉井勇作曲中山晋平『ゴンドラの唄』は1915年帝国劇場の芸術座公演「その前夜」(ツルゲーネフ)の劇中歌で松井須磨子が歌った。
アンデルセンがイタリア旅行をもとに『即興詩人』を書き、そのドイツ語訳を森鴎外が擬古文調に重訳した。ヴェネツィアで歌われた里謡をデンマーク人のアンデルセンが半自伝的作品に取り込み、デンマーク語原典のドイツ語訳をドイツ留学中に鴎外が読み、それを恣意的に日本語に訳して作られたのが「即興詩人」で、そのなかの一節がロシアの小説「その前夜」を日本で舞台化する際の劇中歌になった。
何重にも折り重なった異文化受容。
アンデルセンは全くイタリア語を解さなかったので、アンデルセンの異文化受容は言語ではない
そして「ゴンドラの唄」にゴンドラは出てこない
朱の唇に觸れよ、誰か汝の明日猶在るを知らん。戀せよ、汝の心の猶少く、汝の血の猶熱き間に。