声と目玉 4 ½

吉成虎維ト黑多弘文
「声と目玉 4 ½」

2024年3月16日(土)
14:00〜19:00

戸が開いていたらそのまま、戸が閉じていたらガラリと開けてお入りください

いのち短し、戀せよ、少女、朱き唇、褪せぬ間に、熱き血液の冷えぬ間に、明日の月日のないものを。作詞吉井勇作曲中山晋平『ゴンドラの唄』は1915年帝国劇場の芸術座公演「その前夜」(ツルゲーネフ)の劇中歌で松井須磨子が歌った。アンデルセンがイタリア旅行をもとに『即興詩人』を書き、そのドイツ語訳を森鴎外が擬古文調に重訳した。ヴェネツィアで歌われた里謡をデンマーク人のアンデルセンが半自伝的作品に取り込み、デンマーク語原典のドイツ語訳をドイツ留学中に鴎外が読み、それを恣意的に日本語に訳して作られたのが「即興詩人」で、そのなかの一節がロシアの小説「その前夜」を日本で舞台化する際の劇中歌になった。何重にも折り重なった異文化受容。アンデルセンは全くイタリア語を解さなかったので、アンデルセンの異文化受容は言語ではないそして「ゴンドラの唄」にゴンドラは出てこない朱の唇に觸れよ、誰か汝の明日猶在るを知らん。戀せよ、汝の心の猶少く、汝の血の猶熱き間に。